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医療機関経営者に向けての経営上のリスクおよび対策
医療経営に関わるリスクは,大別して,①経営戦略的リスク,②経営管理的リスク,③資産リスク,④要員リスク,⑤情報リスクがあげられます。
①経営戦略的リスク
こちらについては,経営戦略の失敗,事業計画の破綻,イメージ戦略の失敗,マスコミ対応の失敗があげられます。
②経営管理的リスク
こちらについては,財務破綻,医事・購買・在庫等各種業務管理体制の未整備,組織の硬直化,業務効率性の低下があげられます。
③資産リスク
こちらについては,設備の故障,事故,老朽化があげられます。
④要員リスク
こちらについては,コンプライアンスの意識欠如,人材登用の失敗,不正経理,職員の不祥事,労働災害,職員のモラル低下,慣行の問題化があげられます。
⑤情報リスク
こちらについては,診療記録等の重要書類の消失,患者の個人情報漏洩があげられます。
上記リスクを回避するためには,システムの整備はもちろんですが,チェックシステムを健全に機能させるために,情報を透明化することが必須です。この点については,経営陣の力が強すぎるなど,チェックシステムの機能不全を阻害する因子を取り除くとともに,第三者のチェックを入れるなどの,チェックの客観化を図ることで実現できます。
これらのリスクが危機に発展する段階の初期にその前兆をとらえることができれば,それだけ損害を抑止できる可能性が高くなります。そのためには,①危機の存在するリスクの把握・分析,②不測の事態に関する情報収集および早期警戒,③迅速で効果的な脅威の評価,④意見決定体制の整備,⑤手続の簡便化,⑥内部管理体制の定期的な検査,⑦専門家の支援を得ることが必要になります。
中でも,特に重要なことは,初期状況の情報収集です。現場からの一報を,経営層がどれだけ早く,正確に把握できるかが,初動を早くする決め手になるからです。そのためにも,医療安全管理・財務報告・情報セキュリティに対する統制を適正に行う必要があります。
医療機関の意義が,より良質な医療の提供にある以上,病院経営のリスクの本質は,医療を巡るリスクに他なりません。この観点からは,病院経営においては,単に経営上のリスクのみならず,医療安全管理を適切に行い,インフォームド・コンセントを徹底するなど,患者からの意見に対して適正に対処することで,クレーム化を防止することも必要となります。
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