医療機関における患者・患者家族からのクレーム
今回のコラムでは,医療機関の皆様が悩まれることが多い患者・患者家族からのクレームについてお話しいたします。
医療機関の皆様におかれましては,患者さんやご家族とは勿論,地域住民と良好な関係を築きながら,地域の医療を担っておられることと思いますが,中には業務妨害ともなる悪質なものも多くなっております。
業務妨害の類型
よくある業務妨害の類型としては以下のようなものがあります。
- 執拗なクレーム
- 面会・面談,説明,謝罪の強要
- 暴言,脅迫,暴行,威力・偽計を用いるもの
- 信用毀損,名誉毀損
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各種ハラスメント(セクハラ・パワハラ・モラハラなど)
- 居座り(不退去)
- 正当な理由のない退院の拒否
- 金銭要求
- 医療費(診療費,診察費,入院費)の支払拒否
業務妨害は,当初はクレーム(正当なものか否かは問わず,です。)から始まっていることも多いです。そのため,悪質なクレーマーにならないように,患者側がどの点について不満を持っているかをしっかり把握するなど,早期対応が必須となっていきます。
考えられる対策
考えられる対策としては,クレーム対応マニュアルの整備などがありますが,予防策のみでは対応しきれないところがあります。
また,医療機関には応召義務(医師法19条),説明義務等の問題,および,「患者様から言われることだから耐えないと」という医療機関側の固定観念(このような固定観念は捨ててください。)などがありますので,一般の民間企業とは違った観点からの対応が必要となる場合があります。
クレームには,正当なもの不当なもの,合理的な理由のあるものとないものがあります。また,医療行為が原因となっているもの,医療行為以外が原因となっているものもあります。実際の対応では誠意を持って対応すべき正当なクレームか,厳然たる対応をすべき不当なクレームかを区別するために,事実確認や検討が必要となります。
早期対応がカギ
例えば以下のような内容を整理する必要があります。もしクレームが入っており,整理方法がわからないなどという事情がありましたら,気軽に弊所までご相談ください。
- クレームの原因
- クレームに至る事実経過
- 相手方の要求(表向き,裏側)
- クレーム対応の事実経過
- 院内での検討
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対応方針の決定(早期解決のために妥協できるラインはどこまでか?)
- 要求が最終ラインを超えた場合の対応をどうするか
実際の対応においては,長期化すればするほど悪質化していきますので,早期対応が必須です。そのため,できる限り,クレームが入った時点で専門家へ相談することをおすすめします。
弁護士の対応例とまとめ
個別の事案によりますが,医療機関(病院)側の弁護士の実際の対応としては以下のようなものがありますので,一部紹介いたします。
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相談・アドバイス(早期に相談をしていただくと,より簡便に解決できます)
- 通知・警告
- 代理人としての交渉
- 警察との連携
- 裁判所等の手続利用(調停・仮処分・訴訟)
クレーム対応は,専門家に相談すると相手方に告知するだけで解決することも珍しくないので,医療機関内部だけで抱え込まずに,専門家に相談することが必須です。