医療コラム⑨正確なカルテ記載はその後の紛争防止の為に必要な事

 医療機関に従事される皆様におかれましては,新型コロナウイルスの拡大により,ご苦労が絶えないことと思います。このような折ではありますが,このようなときこそ基本に立ち返り,無駄な労力を割き報酬の返還をせざるを得ないなどの事態を防ぐためにご留意いただきたいことを説明したいと思います。
 
 カルテ上に記載がない診療に対して保険診療や診療報酬をしたことに対する自主返還を求める個別指導がなされると,カルテ上に記載がなされていないことに争いがない場合,これに応じざるを得ません。
 
 (2018年度の個別指導は全国で4724件,返還金は約32億8000万円に上っております。)
 
 実際には診療等を行ったにもかかわらず,カルテに記載がなかったがために自主返還をせざるを得なくなるとすると,それだけで経営に大きなダメージを与えてしまいます。
 
 のみならず,自主返還を行う場合,「指摘を受けた患者」だけではなく,1年間で診察等を行った「すべての患者」の診療報酬を返還する必要があります。そのため,個別指導がなされることは,医療機関の経営にとって非常に大きなダメージを与えることになります。(個別指導に応じるための手続だけでも,該当する患者と診療月を抽出する必要があり,その作業だけでも莫大なものとなることから,現在のようなギリギリの状態下でそのような作業に割く労力はないものと考えます。)
 
 個別指導を避ける一番よい方法は,「カルテに保険診療報酬のルールに従った診療内容をきちんと書く」ということに尽きます。(このことは,後日万が一医療過誤を主張された場合においても,適切な治療を行ったことにつき,もっとも有力な証拠となります。)
 
 また,保険診療報酬を得るがために,実際の傷病名とは異なる診断名を記載することもある(いわゆる「カルテ病名」)かと思いますが,その際は,「○○(保険診療報酬対応病名)疑い」と記載するなど,診療報酬の審査にはねられず,同時に医療過誤の主張の根拠にされないような記載方法をするなどの対策が必要です。
 
 何より,カルテはあくまで「診療の記録」ではありますが,同時に,「どのような診療行為を行ったかを第三者が検証可能な状態に置くためのもの」でもあります。そのため,医師の皆様におかれましては,このような多忙な時期だからこそ,カルテにきちんと診療行為の内容を明記しておき,後々個別指導への対応等,無駄な労力を割く事態を招くことを防止していただきたいと思います。(最近の電子カルテプログラムでは,自動的に診療報酬体系に従った入力ができるようになっているようですが,電子カルテ導入率は150〜199床の病院では39.0%(2018年JAHIS((社)保健医療福祉情報システム工業会)調査。以下同じ。)であり,病床数の減少とともに導入率も減少し,20床〜29床の病院では8.3%と低く,電子カルテシステム導入費用の関係上導入が困難な医療機関もあることと併せて考えると,未だこのカルテ記載問題は大きな問題として今後も残り続けるものと思われます。)
 
 弊所では,保険診療や診療報酬請求の内容に従ったカルテの記載方法についてもアドバイスさせていただくことが可能です。不安に思われた際は遠慮なくご相談ください。
 

(執筆 弁護士小島宏之)

 
 

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