配偶者居住権とは何ですか?
「配偶者居住権」とは、亡くなった方の配偶者が、亡くなった方が所有していた建物(この建物は「居住建物」と呼ばれています。)に無償で住むことができる権利をいいます。
(1)特徴 後述の「配偶者短期居住権」とは異なり、「配偶者居住権」は基本的に終身で認められる権利(建物利用権)に当たります。また、配偶者居住権を有する配偶者は、居住建物を使用する(配偶者ご自身が住むこと)だけでなく、収益すること(他人に貸して賃料を得るなど)も可能です。さらに、配偶者居住権は、終身的な建物利用権であるため、権利自体に価値があると考えられております。配偶者が配偶者居住権を取得した場合、その価値を考慮して、遺産分割を行うことになります(配偶者のその他の遺産の取り分が小さくなる可能性があります)。
(2)権利取得方法 配偶者の方が配偶者居住権を取得するには、大きく分けて4つの方法が考えられます。具体的には、①遺産分割により取得するとされた場合、②遺贈の目的となった場合、③死因贈与契約の目的となった場合、④遺産分割審判において、配偶者が配偶者居住権の取得を希望し、家庭裁判所が特に必要があると認める場合があります。このうち、①では、他の共同相続人の同意が必要となりますし、②・③では、亡くなった方が配偶者へ配偶者居住権を取得させたいという意思がなければ、配偶者は取得できないということになります。
(3)終了原因 配偶者居住権を取得した配偶者がなくなった場合以外にも、配偶者居住権が消滅する場合があります。具体的には、①配偶者居住権について期限の定めを設けていた場合に、その期間が満了したとき、②配偶者が居住建物の利用につき義務違反をした場合、③居住建物が滅失したなど使用収益ができなくなった場合などが考えられます。
「配偶者居住権」に類似した権利として「配偶者短期居住権」という権利があります。「配偶者短期居住権」とは、亡くなられた方の配偶者が、相続開始時に、亡くなられた方の所有していた建物に無償で居住していた場合には、遺産分割成立時などまで一時的に居住建物を利用することができる権利をいいます。配偶者居住権と比較すると、①存続期間が限定的であること、②配偶者は居住建物を「使用」することしかできない(他人に貸すことはできない)こと、③配偶者短期居住権自体に財産的価値はないこと、④相続開始時に居住建物に居住しているだけで当然発生することが特徴であるといえます。