共有不動産(遺産のうち、未分割で共有状態にある不動産)を売却希望ですが他の共有者(相続人)が同意しない場合にはどうすればよいですか
遺産のうち、未分割で共有状態にある不動産を売却したいものの、他の相続人が同意しない場合、対応策として以下の方法が考えられます。
①遺産分割手続きにより遺産分割をする方法 相続開始時に、相続人が複数いる場合、遺産は共同相続人間で共有状態にあります(898条1項)。最高裁の判決では、共同相続人間で遺産分割について争う際には、通常の共有物分割訴訟が認められておらず、遺産分割手続きを採らなければならないとされています。
そこで、売却を希望する相続人(A)は、共同相続人全員に対して遺産分割協議を行うことを求めるべきでしょう。売却に反対する共同相続人(B)が、当該不動産を手放したくないと考えているのであれば、代償分割による分割が可能であることが考えられます。すなわち、Bが不動産を取得する代わりに、BがAに対して代償金を支払うことにより分割を実現することが可能です。
もっとも、代償金について合意できない場合や、Bが不動産の取得を希望していない場合には、代償分割による解決も難しいことが考えられます。その他の分割方法も難しい場合には、遺産分割調停や審判を通じて遺産分割を行うことになります。ただし、遺産分割審判は、裁判官の判断により分割が行われるので、Aの希望通り、不動産を売却できるとは限りません。
②自己の相続分を譲渡する方法 民法は、遺産分割前に、共同相続人が自己の相続分を第三者に譲渡することを認めています(905条1項参照)。ここでいう「譲渡」は売却でも贈与でも問題ありませんし、他の共同相続人の同意は不要です。これによって遺産共有状態から離脱することができますが、(一部に過ぎない)相続分の価格は低く見積もられる可能性が高いでしょう。また、相続分の譲受人が相続人以外の場合、今後相続人以外の者が含めて遺産分割協議を行う必要が出てくるので、新たな問題が生じるおそれがあります。