相続した土地が近隣との境界線があいまいで困っています。遺産の評価にも関わると思うのですが、どうすればいいのですか?勝手に境界線を決めていいのですか?
相続した土地と近隣の土地の境界があいまいなままの場合、相続税について影響が出ることが考えられます(ex.納付額が増えること、一括払いしか認められないようになりうること)。また、境界があいまいなままであれば、不動産の売却はほぼ不可能ですし、近隣住民とのトラブルにもつながりかねません。かといって、境界線を勝手に決めることではできませんし、隣接する土地の所有者とトラブルになってしまいます。そのため、「隣地所有者とともに境界をはっきりさせること」がとても重要ですが、そのためには以下のような方法を採る必要があるでしょう。
(1)境界確認書の作成 まずは、隣接土地所有者と立会いの下、「土地家屋調査士」による土地の測量を行います。「土地家屋調査士」は、不動産の物理的な状況を正確に把握するための調査・測量を行う専門家(国家資格者)です。土地家屋調査士が測量し、境界を確認することができた場合、「境界確認書」を作成することになります。しかし、この境界確認書は、隣接する両土地の所有者の合意(署名押印)がなければ作成することができません。そのため、隣地所有者が境界確認に協力的ではない場合には、境界確認書の作成を目指すことは適切でないといえるでしょう。
(2)筆界特定制度の利用 「筆界特定制度」とは、土地の所有者となっている登記名義人等の申請に基づき、筆界特定登記官が、筆界調査委員の意見を踏まえ、現地の土地の筆界の位置を特定する制度のことをいいます。そのメリットとしては、①公的な判断として筆界を特定できること、②裁判を起こさないため、迅速かつ費用を抑えつつ解決を図られることなどが挙げられます。なお、ここでいう「筆界」とは、土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線であり、所有権の範囲を画する線という意味の「境界」とは必ずしも一致しないことがあります。
筆界特定の決定に不服がある土地所有者は、後述の境界確定訴訟を提起することができます。
(3)境界確定訴訟 「境界確定訴訟」とは、隣接する土地の両所有者間において、境界について争いがある場合に、所有者全員が当事者となって争う裁判のことをいいます。裁判となるため、費用・時間はかかってしまいますが、隣地所有者との合意などは不要ですし、裁判官が何らかの境界(筆界)を確実に定めてくれる点に大きな意義があります。
もっとも、境界確定訴訟については、通常の民事訴訟と異なる点があります。それは、境界を確定することを目的とする裁判であって、当事者の勝敗を決める裁判ではないということです。このような性質を有することから、境界確定訴訟では「通常の民事訴訟でのルール」が妥当しないことが多いです。たとえば、通常、裁判所は当事者の主張していないことを判断の基礎することができませんが、境界確定訴訟では「当事者の主張していない事実」も判決の基礎とすることができ、また、裁判官が独自の境界を決定することができます。また、当事者間の和解をもって訴訟を終了させることもできません。
そこで、当事者は、こういった境界確定訴訟の特徴も踏まえたうえで、訴訟を提起するか否か、訴訟でどのような主張を行うべきかを判断しなければなりません。そのため、境界確定訴訟に不安がある方や疑問がある方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。