相続放棄をした後に撤回できますか?
民法919条1項は、「相続の承認および放棄は、第915条第1項の期間内でも、撤回することができない。」と規定しています。「第915条第1項の期間」とは、相続人となる者が単純承認・限定承認・相続放棄いずれを選択するかを検討する期間(「熟慮期間」と呼ばれています。)をいい、基本的には、被相続人の死亡を知った日から3か月間のことを指します。そのため、相続放棄の申述を家庭裁判所に行った後は、たとえ熟慮期間内であったとしても、基本的に相続放棄を撤回することができません。
ただし、民法919条2項は、一定の場合に、相続放棄を取り消すことができるとしています。具体的には、相続放棄の申述をした者が制限行為能力者(成年被後見人など)である場合や、詐欺・強迫によって相続放棄の申述を行った場合などが考えられます。このような例外的に認められる「相続放棄の取消し」は、追認をすることができるときから6か月以内に取り消さなければなりませんし、相続放棄から10年経過することで取り消すことができなくなります(通常の取消権の消滅時効期間よりも期間が短いため、注意が必要です。)。また、相続放棄の取消しの方法についても、相続放棄と同様に、家庭裁判所への申述が必要となります。
以上のように、一度行った相続放棄は撤回することができませんし、取り消すことができるケースも限られています。そのため、相続放棄をするか否かの判断については、熟慮期間に気をつけつつ、慎重に行う必要があります。また、相続放棄の取消しができるケースについても期間制限(消滅時効)があります。
そこで、相続放棄をするか否かの判断に迷ったり、取り消すことができないか疑問に思ったりしている方は、ぜひ一度早めに弁護士にご相談ください。