相続手続きについてのQ&A
Q1.遺産相続に期限はあるのでしょうか?
遺産相続にあたって必要となる手続きは様々ありますが、その中にも期限の有無、期限の長短は、それぞれ異なります。
期限のある手続きとしては以下のようなものが挙げられます。
①死亡診断書や火葬許可証の取得、死亡届の提出 7日以内
②健康保険・年金などの手続き、世帯主の名義変更届 14日以内
③限定承認又は相続放棄をする場合の、家庭裁判所への申述 相続開始を知った日から3か月以内
→これをしなければ、単純承認をしたものとみなされます。
⓸被相続人の所得税申告 相続開始を知った日の翌日から4か月以内
⑤相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から10カ月以内
⑥遺留分侵害額請求権の行使 遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った日から1年以内
⑦不動産の相続登記 不動産の取得を知った日から3年以内(令和6年4月1日から義務化)
→正当な理由なく相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
一方で、期限のない手続きとしては、以下のようなものが考えられます。
①遺言書の有無の確認
②相続人や相続財産の確認
③遺産分割協議・調停・審判
※ただし、相続開始から10年を経過すると、原則として、特別受益や寄与分などを考慮した具体的相続分を前提とする遺産分割ができなくなるとする制度が制定されました(民法904条の3)。この規定は、施行日の令和5年4月1日以前に発生した相続にも適用されますので注意が必要です(相続開始から10年経過又は令和10年4月1日のいずれか遅い時までは猶予されます)。他の相続人の特別受益や、自己の寄与分を主張したと考えている相続人の方は早めに遺産分割を行うように準備する必要があります。
⓸不動産・預貯金・株等の名義変更
※不動産については、相続登記の義務化に伴い、相続から3年以内に遺産分割がまとまらない場合(=誰を名義人とするか決まっていない場合)であっても、少なくとも「相続人申告登記」が必要となりました。
Q2.不動産や預金、株等の名義変更はどうすればよいのでしょうか?
まず、不動産や預金、株式などについての遺言書がある場合には、その遺言書の内容に従って名義を変更します。
一方で、そのような遺言書がない場合には、相続人間での遺産分割に従って名義変更を行うことになります。この遺産分割は、まず相続人間での協議で分割を図りますが、協議が上手くいかない場合には遺産分割調停や遺産分割審判などによって分割内容を決定することになります。
不動産の名義変更は、相続人ご自身で行うことも当然できますが、司法書士に名義変更を依頼することも可能です。預金や株等の名義変更については、各金融機関に必要書類(遺産分割協議書や戸籍謄本など)を提出したうえで手続きを行うことになります。
なお、名義変更は、遺産分割の完了を前提とする登記手続きですが、相続した不動産については、令和6年4月1日から、「相続登記」が義務化されていますので別途注意が必要です。つまり、相続財産のうち、「不動産」は、遺産分割がまとまらない場合であっても、相続でその不動産を取得したことを知った時から3年以内に相続登記(相続人申告登記)をしなければならないというものです。正当な理由なく不動産の相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。3年以内に遺産分割がまとまった場合には、その遺産分割の結果に基づく相続登記を行えば足ります。また、この相続登記義務化は、令和6年4月1日より前に相続した不動産についても対象となります。3年間の猶予期間がありますが、過去の相続についても適用があることには注意が必要です。
Q3.相続手続きはいつ頃から始めればいいでしょうか?
相続手続きについては、相続が発生したらできる限り早く開始する方が良いです。相続手続きにおいて、期間制限が設けられているものがたくさんあるからです。
期間制限が設けられているものとして、以下のようなものが考えられます。
①死亡診断書や火葬許可証の取得、死亡届の提出 7日以内
②健康保険・年金などの手続き、世帯主の名義変更届 14日以内
③限定承認又は相続放棄をする場合の、家庭裁判所への申述 相続開始を知った日から3か月以内
⓸被相続人の所得税申告 相続開始を知った日の翌日から4か月以内
⑤相続税の申告・納付 相続開始を知った日の翌日から10カ月以内
⑥遺留分侵害額請求権の行使 遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った日から1年以内
⑦不動産の相続登記 不動産の取得を知った日から3年以内(令和6年4月1日から義務化)
これらの期間制限のある相続手続きは、書式が複雑であったり、具体的に何をすればいいのかが分かりづらいことが多いです。自力での手続き完了が難しいと感じた場合や、疑問点・不安な点がある場合には、それぞれの専門家に相談することをお勧めします。
一方で、遺産分割を完了させることについては、明確な期間制限はありません。しかし、時間が経てば経つほど、各共同相続人間での解決が困難となることが多いですし、それが経済的にも精神的にも負担となることが考えられます。できる限り早めに遺産分割を完了させましょう。また、そもそも相続人や相続財産の範囲で争いがある場合や、遺言の有効性が問題となる場合などには遺産分割協議・調停だけでは解決せず、訴訟の場で決着をつける必要が出てきます。こうした場合、自己の相続人としての権利を損なわないように、弁護士に相談・依頼することをお勧めいたします。